Virtual Production Boost 2025

  • 会期 
    11月13日(木)/11月15日(土)
  • 主催 
    Virtual Production Boost 2025 実行委員会

2026/2/3

座談会レポート

Virtual Production Boost 2025開催記念企画 日本のバーチャルプロダクションの未来とは? VPスタジオを運営するリーダーたちが本音で語り合う<後編>

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「Virtual Production Boost 2025」との連動企画。ラストとなる後編では、バーチャルプロダクション(VP)の現場で求められる人材とその育成方法が議論された。さらに、日本のVPシーンを盛り上げていくにはどうすれば良いのか、会社の垣根を超えたワーキンググループの結成やゆるやかな連携の必要性など、具体的なアクションも提案された。過渡期を乗り越えて次のステージへと進むための道筋が、3時間超にわたって熱心に語り合われた。

※本記事では、読みやすさの観点から敬称や法人格を略記しています。


VP人材の育成は、標準化とVPスーパーバイザーの確立が鍵

——釈迦に説法で恐縮ですが、VPは映像制作の全工程に関わることに加えてUnreal Engine(ゲームエンジン)やメディアサーバーといった従来の映像制作にはなかった新しいテクノロジーを用いるため本当に幅広い知識が求められます。皆さんは人材育成や社内教育をどのように行われていますか?

HCA/井村:
われわれは自社の案件だけでなく他社の案件に井村事務所やi7所属のスタッフが参加していることもあり、VPについてもまずは用語や職種などを業界標準となる定義を行なっていく必要があると思います。

ここが疎かになると、せっかく新人を採用しても特定の組織でしか通用しないVP手法を教えてしまうリスクがあるので。

理想は、撮影と照明の全てを把握する撮影監督や、3DCGと実写合成を監修するVFXスーパーバイザーのように、VPのワークフローと必要な知識に精通したポジションとして「VPスーパーバイザー」を定義し、業界内に浸透させることだと思います。

東映/樋口:
同感です。自分も含めて現在、VPのプロデューサーやスーパーバイザーを務めている人の多くは、これまでCG・VFXを主に手がけてきた人だと思います。

そこからVPを実際にやってみながら、新しい知識を学んでいって業務として成立させているのが実状だと思います。それって、“何が正解なのかわからないなかで暗中模索している状況”とも言えるので、そこからさらに教育となると、基準となるものが必要です。

——ソニーPCLさんは、世界的なVPのリーディングカンパニーであるPixomondo(以下、PXO)が米国ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント傘下になったのを機に、PXOとの連携を強化されていると思います。VP教育についてもPXOから得られる知見は多いですか?

ソニーPCL/大賀:
そうですね。PXOのVPチームとは密にコミュニケーションを取っています。ただ、ソニーPCLの取り組みにはPXOがやっていないことも色々とあるので、一方的に学ぶのではなく、お互いの知識を共有しながら、より良いワークフローや手法を模索しています。

海外のVP人材教育のやり方をそのまま日本に持ち込んでも、そもそもの産業規模や慣習が異なるので上手く機能しないと思います。井村さんや樋口さんがおっしゃったように、日本のVP業界として基準を定めていく必要があると思います。

テルミック/三好:
その意味では、VAD(Virtual Art Department)のようにVPを有効に機能させる上で生まれた新しい部門や職種を拠り所にすると属人化を避けられる気がしますね。

そしてVPスーパーバイザーが悪い意味での何でも屋さんに陥らないように、撮影監督との役割分担など、業界全体として妥当な区分けの目安を、こうした場で意見を重ねながら決めていけるのが良いのかなと思いました。

電通CRP/長谷川:
どういう順番で定義付けしていくのか、業界内に浸透させていくのかはこれまでの映像制作現場における慣習や各部署の力関係で決まってくる面もありますよね。だからこそ、しがらみや垣根を越えて話し合うことが大事だと思います。

私は日本アド・コンテンツ制作協会(JAC)の制作委員長も務めているのですが、 今、JACではVPに取り組まれていらっしゃる各社をヒアリングさせていただいて、 VPに関するホワイトペーパーのようなものを発表予定です。詳細はこれから詰めていくところですが、ぜひ活用してもらえればと思います。

TFC/徳重:
今は過渡期なわけですが、その意味ではVPプロデューサーというポジションは将来的にはなくなるはずです。個人的な希望的観測を含めてですが、5年以内にグリーンバック・合成撮影と同様にVP撮影もPM・制作部が現場を仕切れるようになっていることが理想です。

逆にVPスーパーバイザーは不可欠。自分としては、その方向へ業界が進んでいくようにお手伝いしていきたいと思っています。

HCA/井村:
グリーンバック撮影もロケ撮影も制作部がコスト感を把握しているわけなので、VPもその域に到達させる必要がありますね。

今はVPという手法についてはある程度は理解されているけど、実施する場合はどれくらいの人員が必要で、どれくらいの費用がかかるのかという感覚がつかめていないからVPプロデューサー的な立場がつくられていると思います。

CAI/下平:
プロデューサーにVPの相場観をもっていただくことは大事だと思います。

プロデューサーという立場の方々は、全体の予算を管理しながらもそれ以上に「この監督とやりたい」「この企画を実現させたい」といった情熱を抱きながら作品づくりを取りまとめているわけなので。もしかしたらプロデューサーを対象にしたワークショップもやってみると良いかもしれませんね。

TFC/徳重:
その意味では特定のスタジオに紐付かない、VPに精通している人材も大事だと思います。海外にはそうした立場で活動している人がいるんですかね?

ソニーPCL/大賀:
いるみたいですよ。先日、海外の案件をうちでやったときに、クライアント(プロダクション)がアサインしたVPスーパーバイザーがフリーランスの方でした。

VPのオペレーションは自分たちソニーPCLのスタッフが担当しましたが、その方は撮影周りからUnreal Engine、さらにメディアサーバーまで正しい知識をもって全体を取りまとめてくれました。僕らとしても普段ならやらない手法にチャレンジできたりと、新鮮で面白かったです。

HCA/井村:
先ほど少しお話しましたが、まさにそうしたVPスーパーバイザーを輩出しようと取り組んでいる最中です。

フィルム撮影の時代から活動しているカメラマンの中から4〜5名ほど選び、VP案件を手がけながら3DCGやメディアサーバー周りの知見を重ねてもらっています。

3〜5年以内を目安に、彼らにはLEDウォールの設計から現場の仕切りまでVP全体を監修する役割を担ってもらおうとしています。

——フィルム撮影にも精通されているカメラマンから候補を選ばれた理由を教えてください。

HCA/井村:
自分もそのひとりですが、フィルム撮影では経験の中で培ってきた画づくりの感覚を頭の中で論理化して映像化するということをカメラマンは行なってきたからです。

VPはデジタルベースなので、その感覚を数値に置き換えることができます。フィルムの経験があるカメラマンは、その数値化のコツをつかむのが早いんですよ。逆にデジタルネイティブの若手だと、苦労している印象です。

——なるほど。場数をふんでいるという意味でもベテランの知見が活かせそうですね。


まずはゆるやかな連携から。会社の垣根を超えて、日本のVPを盛り上げていく

——あっと言う間に3時間以上が経ちました。まだまだ話し合いたいところだと思いますが、これまで話してきたことをふまえて、まずはどんなことから取り組むのが良いと思いますか?

ソニーPCL/大賀:
今日はみなさんと未来の話をすることができてすごく有意義でした。

この5年ほどで日本でもVPがある程度は使われるようになったと感じています。だから、これからの5年は、ロケかVPか、グリーンバックかVPかではなく、VPを使ってどんな演出ができるのかというクリエイティブを高めていく意識をより強くもって、実際の案件を通して具体的な成果につなげていきたいと僕は思っています。

その意味でも、会社の垣根を超えた横のつながりが大事になるので、ひき続き交流させてください。

HCA/井村:
業界団体と言うと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、まずはここにいる皆さんでVPのワーキンググループを作りたいですね。

われわれの取り組みを国や行政に認めてもらうという意味でもビジネスとしてしっかりとマネタイズできるようにする。そのために必要なものは何か? どんな課題を解決する必要があるのか? さらに新しいテクノロジーが登場したときに、どのようにVPに取り入れるのが効果的か? といったことを、このグループで知識を共有しながら取り組んでいくのが良いと思います。

G-WORKS/吉川:
この座談会の始まりから言わせていただいてますが、VPを振興する組織があると自分たちのように独自路線で活動している会社としてはどれほど心強いかと思っています。

何か組織だったり、VPのポータルサイトを作るといった具体的なアクションにも積極的に携わっていきたいと思っているので、ぜひ今後ともよろしくお願いします。

東映/樋口:
今日はありがとうございました。VPにかぎらず、何か新しいテクノロジーが出てきたときはこうやって実際に取り組んでいる会社があつまって、助け合いながら業界全体として発展していくという環境というか、習慣を育む良い機会になるんじゃないかと思っています。

VPって小難しいところがありますが、アナログかデジタルかを問わず目の前に出現させたものを撮る手法なので、実写畑の人たちにもわかりやすくて、協力が得られやすいという利点もあるんですよね。

こうしたセミナーやワークショップも、撮影監督向け、美術部向け、制作部向けといった色々な切り口で実施していくと、さらに横のつながりを充実させられると思います。今日はスケジュールが合わなくて参加できなかった人たちもいるので、これからもみんなで協力し合いながら盛り上げていきましょう。

テルミック/三好:
テルミックは美術から始まり、電飾や機構などの技術を組み合わせた演出の提供を長年続けてきたので、そうした独自性を活かしながら日本のVPを盛り上げるお手伝いができればと思います。

例えば自社スタジオの運営と並行して、日本でもフリーランスのVPスーパーバイザーが活躍するようになったときに、そうした人たちがどのスタジオに行ってもサポートできるように、VPに関わる機構やVADの役回りも確実に担えるようにしていきたい。

余談になりますが、先日、スタジオ見学にいらしたある放送作家の方から「このVPを使えば、リアルなドッキリ映像が撮れそうですね」と言われたとき、目から鱗が落ちました。VPって、まだまだ新しい可能性を秘めた手法だと思うので、皆さんとはひと味ちがうVPにこそ率先して取り組んでいければとも思っています。

ヌーベルバーグ/中江:
今日の座談会の後半では、VPスーパーバイザーの重要性が話し合われましたが、ヌーベルバーグからもそうした役割を担える人材を輩出することを目指していきたいです。

われわれは長い間、放送業界の枠内に止まっていましたが、VPというまだ確立されていない手法に可能性を感じて n00b.stというXR/IPスタジオを始めました。そういうチャレンジをしたからこそ、今日はこうして皆さんと交流する機会にも恵まれました。これからも積極的に新しい領域に挑戦して、そこから得たナレッジを皆様と共有したく考えております。

ニコンクリエイツ/野田:
皆さんとお話できただけでも、自分の頭の中をだいぶ活性化できました。

組織づくりですが、まずはゆるやかに連携していくのが良いと思います。こうした集まりを定期的に行いながら、業界共通の課題をひとつずつ解決していくことによって、VPスーパーバイザーの確立などの道筋が見えてくるんじゃないかな。

あとはわれわれの活動を世間一般に知ってもらうという意味では、VPのアワードを新しく設けたり、実績ある映像系のアワードにVP部門を作ってもらうという働きかけも大事だと思います。

CAI/下平:
くり返しになりますが、まずはプロデューサーや監督、カメラマンといった決定権をもっている人たちが制作手法の候補としてVPを当たり前に挙げてもらえる環境をつくることだと思います。

自分たちも2年前にVPスタジオをオープンさせたときに、ゼロベースで何ができるのか、どう使うと面白い映像が作れるのかといったことを学んでいきました。そして、プロデューサーがVPを有効な選択肢として自信をもってお客さんに提案していくということを続けることで、少しずつ実績が増えていき、お客さんにもVPを使うメリットを実感していただけるようになってきました。

そんな風にスタンダード化した先に、演出などクリエイティブへのこだわりにもチャレンジできるようになるはずです。

電通CP/長谷川:
途中で現状のままでは衰退につながるリスクがあるという意見が出ましたが、僕自身は今がふんばりどころだと思っています。

少し視点を変えると、地球温暖化が進む一方なので夏場のロケ撮影が非常に難しくなっていますよね。そしてCO2排出削減という面でもVPは確かな効果があることも立証されているので、色々な観点からVPを利用するメリットを提案していきながら、実際に良い映像に仕上げていくことで道が拓けると思います。

角川大映/佐藤:
VPは本当に面白いシステムだと思っています。

大袈裟に聞こえるかもしれませんが、こんな面白いVPをあきらめてしまったら日本の映像産業が次のステージへと発展していく機会が損なわれてしまう気がしています。

まだしばらく時間はかかるかもしれませんが、皆さんとの横のつながりを保ちながらVPが当たり前に使われる環境を作っていけたらと思います。

うちのスタジオは現在、最小人員で運営しているのでスタッフさんを共有させていただくという意味でもひき続きよろしくお願いします。

TFC/徳重:
自分もVPは面白いシステムで、将来的には世界標準になると思っています。

世界標準の映像技法として立体視(3D映画)がありますが、残念ながら日本では衰退してしまいました。だからこそVPには絶対に同じ轍を踏んでほしくない。

まだしばらくは過渡期が続くでしょうが、CGなのか、撮影なのか、制作なのか、それぞれが得意とするものを活かしながら、絶対にVPをつぶさないように盛り上げていきましょう。


クレジット
TEXT_NUMAKURA Arihito
PHOTO_Arimura Ren

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